聖マカリオス大修道院は、エジプト北部のワーディー・アル・ナトルーンにあるコプト正教会の修道院です。
カイロとアレクサンドリアのほぼ中間に位置し、1700年以上にわたり、祈りと修道生活が受け継がれてきました。現在も100名を超える修道士たちが生活しており、世界各地から巡礼者や見学者が訪れています。
この修道院は、ワーディー・アル・ナトルーンに現存する四つの歴史的修道院の一つであり、歴代のコプト教皇を最も多く輩出した修道院としても知られています。
聖マカリオス(300年頃〜390年)は、「砂漠の教父」と呼ばれる初期キリスト教修道士たちの代表的人物です。西方教会では「エジプトのマカリオス」として知られ、修道制の父と呼ばれる聖アントニオスと並んで深く尊敬されています。
若い頃のマカリオスは、この地方で働くごく普通の青年でした。しかし、神の召しを受けて砂漠へ退き、祈りと修道生活を始めました。
やがて彼のもとには多くの弟子たちが集まり、現在の聖マカリオス大修道院の基礎となる修道共同体が形成されました。
聖マカリオスは390年に永眠しましたが、その教えと生き方は、今日まで受け継がれています。
彼が大切にしたのは、◉神の前にへりくだること、◉隣人に慈悲をもって接すること、◉神への揺るぎない信頼を持つこと、◉絶え間なく祈り続けることでした。
彼は人を裁くのではなく、その人が神との交わりを回復できるよう祈ることを、何よりも重んじました。
聖マカリオスは、言葉だけで教えた人ではありません。◉祈り、◉謙遜、◉慈悲、◉神への信頼を日々の生活の中で実践し、その生き方そのものが、後の修道士たちへの教えとなりました。
聖マカリオス大修道院は、長い歴史の中で、迫害や襲撃、飢饉や疫病など、数多くの困難を経験しました。
それでも祈りの灯が消えることはありませんでした。
20世紀後半には、マッタ・アル=ミスキーン修道士と仲間の修道士たちによって、修道生活の再建と建物の修復が進められました。
その結果、修道院は新たな発展を遂げました。
修道院の中心となるのが聖マカリオス教会です。その基礎は、4世紀の聖マカリオスの時代にまで遡ります。
教会は時代とともに、修道士の数に応じて拡張されたり縮小されたりしながら、現在は三つの聖所を備えています。
洗礼者聖ヨハネの聖所には、新約聖書と旧約聖書の物語や人物を描いた12世紀の壁画が今も残されています。
また教会内には、修道院の創設者である聖マカリオスをはじめ、洗礼者聖ヨハネ、預言者エリシャ、そのほか多くの聖人たちの聖遺物が安置されています。
現在も100名を超える修道士たちが、この修道院で共同生活を送りながら、祈りと労働の日々を送っています。
毎日、早朝、正午、夕方に共同の祈りがささげられ、さらに週に一度、深夜から早朝にかけて聖体礼儀が執り行われます。
修道士たちは祈りだけでなく、農業や出版、巡礼者の受け入れなど、それぞれの奉仕を担いながら生活しています。
また、「アガペー(愛餐会)」と呼ばれる共同の食卓を囲み、互いに助け合いながら共同体としての生活を大切にしています。
(巡礼者宿泊施設)
修道院には、巡礼者やリトリートを希望される方のための宿泊施設「アンバ・エピファニオス・リトリートハウス」があります。
歴史ある修道院区域に隣接した静かな場所にあり、祈りと黙想のひとときを過ごすことができます。
この施設は、聖マカリオス大修道院の修道院長を務めたアンバ・エピファニオス(1954–2018)の構想によって建てられました。
2018年には、コプト教皇タワドロス2世によって開所式が行われました。
個室バスルーム付きの客室をはじめ、礼拝堂や駐車場などを備え、日帰りから長期滞在までご利用いただけます。ご利用の際は、事前にご予約ください。
滞在中は担当の修道士がお世話をいたします。また、必要に応じて、担当の修道士と信仰や人生について語り合う時間を持つこともできます。
また、修道院を見学される場合も、事前に訪問日時をお知らせいただくことをおすすめします。修道院へ向かう途中には複数のゲートがあり、訪問者の確認が行われるため、あらかじめご連絡いただくことで入場がよりスムーズになります。
訪問や宿泊に関するご相談・ご予約は、下記までお気軽にお問い合わせください。
修道院では、祈りや修道生活に関する書籍を出版しています。書籍は英語、イタリア語、韓国語でも出版されています。
そのほかの出版物については、修道院出版部門の公式サイトをご覧ください。
【参考図書(日本語)】
聖マカリオスや砂漠の教父たちについて理解を深めるために、日本語で読める書籍も出版されています。
『砂漠の師父の言葉』 https://amzn.asia/d/0fdVTAqz
『砂漠の知恵』 https://amzn.asia/d/0dXUv1zc
※これらは修道院の出版物ではありません。
また、修道院ではオリーブやデーツを栽培する農場のほか、大規模な牛の牧場とチーズ工房も運営しています。農場で収穫されたオリーブやデーツは、食用オリーブやデーツ菓子などの商品に加工され、乳製品やチーズとともに販売されています。
これらの収益は、孤児や生活に困難を抱える人々への支援をはじめ、修道院の維持・運営にも役立てられています。
聖マカリオス大修道院は、単なる歴史的建造物ではありません。
1700年以上にわたり祈りが受け継がれ、今もなお修道士たちが祈りと奉仕の生活を続けている、生きた修道院です。
キリスト教徒の方はもちろん、修道院の歴史やエジプトの文化に関心のある方も歓迎しています。
この場所を訪れるすべての方が、砂漠の静けさの中で心を休め、神の平安に触れるひとときを過ごされることを願っています。